金正恩「新体制」と「対米交渉」の行方(3)

執筆者:平井久志 2019年4月29日
エリア: 北米 アジア
米朝会談後初の経済視察を三池淵から始めた金正恩党委員長(『労働新聞』HPより)

 

 平壌では3月25~26日、朝鮮人民軍の現場の幹部を集めた「中隊長・中隊政治指導員大会」が開かれた。同大会の開催は2013年10月以来約5年半ぶりで、最高人民会議代議員選挙での投票を除けば、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長にとってハノイ会談決裂後の最初の公開活動が、同大会への参加であった。大会には中隊長、中隊の政治指導委員、各級部隊や軍事学校の指揮官らが参加した。

帰国後、最初の公開活動は軍関係

 大会初日の25日には金党委員長が開会の辞を述べ、「人民軍を百戦百勝の最精鋭強兵に強化し、発展させるための跳躍台が築かれた」とした。さらに「党中央委員会第7期第3回総会の精神を貫徹するための闘争で国全体が沸き立っている高揚した時期」と語り、経済建設と核開発を同時に進める「並進路線」を終了し、経済建設に集中する路線が不変であることを示した。その上で「試練と難関は依然として重なっているが、革命の軍服を着て党と革命、祖国と人民を守護していく頼もしい戦友らがそばにいるため、恐れるものも躊躇することもないという必勝の信念をさらにしっかりと固めることになる」とした。

カテゴリ: 政治 社会 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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