クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

この不況は不妊国家を救うのか

執筆者:徳岡孝夫 2009年2月号
タグ: 労働者 日本 韓国
エリア: アジア

 今年も写真付きの年賀状が何十通も来た。夫婦で赤ん坊を抱っこし、親も子もニッコリ笑っている。赤ちゃんには、たいてい奇想天外な名が付いている。名古屋郊外の女子短大で教えたときの、教え子の賀状である。 平成元年から行って五年間教えたから、二十歳で卒業した娘たちはめいめいに白馬の騎士を見つけ、いまや子育ての時代に入っている。 日本を包む少子化の暗い瀬音の中で、流れに逆らい必死に溯上する鮭の群れと思いたいが、いかんせん天下の形勢は彼女らに利あらずである。教員の一人で私の同僚だった方が亡くなり、昨年末に名古屋駅前のレストランで「偲ぶ会」を催した。集う者二十六人。元教員を除くと元学生は十八人で、うち五人は卒業時と姓が同じだった。

カテゴリ: 社会 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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