今年も写真付きの年賀状が何十通も来た。夫婦で赤ん坊を抱っこし、親も子もニッコリ笑っている。赤ちゃんには、たいてい奇想天外な名が付いている。名古屋郊外の女子短大で教えたときの、教え子の賀状である。 平成元年から行って五年間教えたから、二十歳で卒業した娘たちはめいめいに白馬の騎士を見つけ、いまや子育ての時代に入っている。 日本を包む少子化の暗い瀬音の中で、流れに逆らい必死に溯上する鮭の群れと思いたいが、いかんせん天下の形勢は彼女らに利あらずである。教員の一人で私の同僚だった方が亡くなり、昨年末に名古屋駅前のレストランで「偲ぶ会」を催した。集う者二十六人。元教員を除くと元学生は十八人で、うち五人は卒業時と姓が同じだった。

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