テロ組織の女が訪ねてきたのではないか――? 身に覚えのない問いを受け、信也はそれを否定するが……。
[承前]
玄関先で彼らを見送っていると、入れ違いに坂道に入ってきた軽自動車があった。この地区の町内会の役員とその夫人が来たのだとわかった。町内の農家の夫婦だ。信也の書棚から有害図書が奪われたときも、ふたりはこの家にきて熱心に本を検分した。
玄関前に車を停めて、ふたりが下りてきた。亭主のほうは、少し怪訝そうな顔でSUVが去っていく方向に目を向けている。
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