写真提供:時事
放射線量が高く、立入禁止となったエリアを通ることに真智は不安を示す。しかし、信也にはある切り札があった。
[承前]
奥の納屋から、男がひとり出てきた。
長谷川だ。もうじき古稀だ、と、五月に会ったときに言っていた。キャップに、オーバーオール姿だった。何か手仕事でもしていたのかもしれない。
車を停め、信也は下り立ってあいさつした。
「沖本です。その後どうです?」
相手は、白い歯を見せて近づいてきた。
「変わらないけど、あんたの娘さんか?」

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