ロシアがいま北方領土問題「封印」を図る3つの理由

7月26日、北方領土の択捉島を訪問したミシュスティン露首相[ロシア政府提供](C)時事
プーチン政権は日本軍国主義批判などを再燃させる「歴史戦」攻勢で、北方領土問題の存在を封じ込めようとしている。それは、ロシアに吹き荒れる国粋主義の後押しだけが理由ではなかった。

 ウラジーミル・プーチン露大統領の下で国粋主義を強めるロシアが、北方領土問題の「封印」に向けて歴史戦を強化している。この夏以降、ロシア外務省は日本の戦争責任を問う声明を次々に発表。旧ソ連がシベリアに抑留中の旧日本軍人を訴追した「ハバロフスク裁判」(1949年)をめぐる大型学術会議も開かれた。

「ロシアの4島領有は第2次世界大戦の結果」という論理を固定化しており、中国と共同歩調を取る動きもみられる。北方領土の免税特区構想も、安倍晋三前首相が進めた共同経済活動を反故にするものだ。ロシアがむきになって領土問題を葬ろうとする背景を探った。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 拓殖大学海外事情研究所客員教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所客員教授。国際教養大学特任教授、拓殖大学特任教授を経て、2024年から現職。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)、『ゾルゲ事件 80年目の真実』(文春新書)など。
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