安倍・プーチン「首脳交渉」挫折で残る「2つの謎」

執筆者:名越健郎 2020年9月4日
エリア: アジア オセアニア
何度も交わした握手だったが……(写真は昨年6月、G20大阪サミットにて)(C)EPA=時事

 

 安倍晋三首相が悲願としたロシアとの北方領土問題解決による平和条約締結は、首相の病気退陣により最終的に破綻した。

 首相は辞任表明した8月28日の記者会見で、日露平和条約、北朝鮮による日本人拉致問題、憲法改正が実現しなかったことを挙げ、「痛恨の極み」「断腸の思い」と形容した。

 安倍首相は過去7年間で計11回訪露し、1期目を加えるとウラジーミル・プーチン大統領との首脳会談は計27回に及んだ。北方領土問題打開に積極的に取り組み、従来の対露政策を修正、経済協力を進めながら領土問題を解決する「新しいアプローチ」を打ち出した。国是だった「4島返還」を「2島プラスアルファ」に転換して交渉に臨んだ。米国の対露封じ込めにも同調せず、G7(主要7カ国)の対露制裁に日本だけ参加しないこともあった。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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