封鎖線を越えるため、信也と真智母娘は身元を偽わりバスに乗ることに。今度こそ成功するのか、緊張が高まるが――。
[承前]
バスは、八時五分前にやってきた。いくつかの飯場に向かうバスが、ほぼ同時にやってきたのだ。十五分ほど前には、横浜や浦賀方面行きのプレートをつけたバスも、相次いで六、七台出発していった。信也はなんとなく、寄場に労働者を乗せる車がやってくるのは、早朝だと思い込んでいた。でも、自分たちがいちおう雇われたかたちになっている事業所では、こうして夜に労働者を共同統治地域の外で集めて、地域内に運ぼうとしている。どんな事情があるのだろう。
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