マレーシア政情不安が招く「中国の浸透」

執筆者:久末亮一 2021年9月29日
タグ: 中国 習近平
エリア: アジア
首相に就任したイスマイルサブリ氏(C)AFP=時事
​2018年にマハティール氏が野党連合を率いて建国以来初の政権交代を実現させて以降、不安定な政権が続いているマレーシア。腐敗体質が構造化するなかで、利権の源泉である中国との関係構築を求める動きが増している。

 2021年8月16日、マレーシア統一プリブミ党(PPBM)のムヒディン・ヤシン首相が辞任表明し、8月20日に統一マレー国民組織(UMNO)出身のイスマイル・サブリ・ヤーコブが国王から首班指名され、首相に就任した。これによって3年ぶりにUMNOが首相の地位を奪還した。

 近年のマレーシアでは、政権が短命に終わるケースが繰り返されているが、この傾向は今後も継続する可能性が高い。なぜなら、それは1980年代から21世紀初頭まで続いた、マレーシア政治の構造的な「負の遺産」が遠因となっているからだ。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
久末亮一(ひさすえりょういち) 日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所 開発研究センター 企業・産業研究グループ 副主任研究員。学術博士(東京大学)。香港大学アジア研究センター客員研究員、東京大学大学院総合文化研究科助教、政策研究大学院大学安全保障・国際問題プログラム研究助手などを経て、2011年から現職。主な著書に『評伝 王増祥―台湾・日本・香港を生きた、ある華人実業家の近現代史』(勉誠出版、2008年)、『香港 「帝国の時代」のゲートウェイ』(名古屋大学出版会、2012年)、『転換期のシンガポール――「リー・クアンユー・モデル」から「未来の都市国家」へ』 (日本貿易振興機構アジア経済研究所、2021年)がある。
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