医療崩壊 (61)

コロナで「超過死亡」OECD最悪:日本が見過ごすウクライナとフクシマの教訓

執筆者:上昌広 2022年4月2日
ウクライナ南東部ザポロジエの原子力発電所のライブカメラに映った落下する光る物体=3月4日[ザポロジエ原子力発電所YouTubeより](C)時事
日本の「超過死亡」急増は、自粛強制が高齢者の健康悪化を招いたからと考えられる。ロシアの原発攻撃に冷静さを保つウクライナから、そして福島第1原発事故後のパニックからも当然得るべき社会を守るための教訓を、日本のコロナ対策は生かしていない。

   医療ガバナンス研究所には、妹尾優希さんというスロバキアのコメニウス大学医学部を卒業した医師がいる。ロシアのウクライナ侵攻開始以降、彼女はSNSを通じ、現地の友人たちと連絡を取り合っている。彼女を通じて入手する情報は、日本での報道とは随分違う。

ウクライナ周辺国に広がる被曝への恐怖心

   彼女が強調するのは、ウクライナ以上に周辺国の住民が被曝を心配していることだ。例えば、スロバキアではヨウ素剤の需要が高まると同時に、3月2日には1万人以上のスロバキア国民が、国外への避難のためにパスポートを請求した。NATO(北大西洋条約機構)加盟国であるスロバキアにロシアが軍事侵攻することは考えにくいから、これは原子力発電所への攻撃によって放射性物質が漏出した場合への準備だ。

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執筆者プロフィール
上昌広(かみまさひろ) 特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長。 1968年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科を卒業し、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年3月まで東京大学医科学研究所特任教授を務める。内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。2005年10月より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究している。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長も務め、積極的な情報発信を行っている。『復興は現場から動き出す 』(東洋経済新報社)、『日本の医療 崩壊を招いた構造と再生への提言 』(蕗書房 )、『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』(光文社新書)、『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社+α新書)、『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日 』(朝日新聞出版)など著書多数。
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