シンガポール「ポスト・リー」時代を担うローレンス・ウォン次期首相とは何者か?

執筆者:久末亮一 2022年5月4日
カテゴリ: 政治
エリア: アジア
次期首相に内定したローレンス・ウォン財務相(C)AFP=時事
 
シンガポールの次期首相が内定した。リー家という建国以来の支柱のない「ポスト・リー時代」を担うのは、49歳のローレンス・ウォン財務相。選出プロセスの迷走の末に登場したダークホースはどのような人物なのか。

 

 

ついに内定した次期首相

 2022年4月14日、シンガポールのリー・シェンロン首相は、フェイスブック上で重要な投稿を行った。それは自身の後継者選出が、決着したことを告げる内容であった。次期首相に内定したのは、官僚出身で49歳のローレンス・ウォン(黄循財)財務相であった。

 次期首相の選出は、数年間にわたり迷走を続けてきた。これは、「建国の父」リー・クアンユーの「第1世代」、2代首相ゴー・チョクトンの「第2世代」、現首相リー・シェンロンの「第3世代」に続く「第4世代」(4G)と呼ばれる次期政治指導層のエリート集団にとって、リー・クアンユーあるいはリー家という建国以来の暗黙の支柱がない、前例なき将来に向けた自らのリーダーを選ぶことが、非常に困難な課題であったことを象徴していた。

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執筆者プロフィール
久末亮一(ひさすえりょういち) 日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所 開発研究センター 企業・産業研究グループ 副主任研究員。学術博士(東京大学)。香港大学アジア研究センター客員研究員、東京大学大学院総合文化研究科助教、政策研究大学院大学安全保障・国際問題プログラム研究助手などを経て、2011年から現職。主な著書に『評伝 王増祥―台湾・日本・香港を生きた、ある華人実業家の近現代史』(勉誠出版、2008年)、『香港 「帝国の時代」のゲートウェイ』(名古屋大学出版会、2012年)、『転換期のシンガポール――「リー・クアンユー・モデル」から「未来の都市国家」へ』 (日本貿易振興機構アジア経済研究所、2021年)がある。
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