【Foresight独占インタビュー】カート・キャンベル米国家安全保障会議インド太平洋調整官

米ASEAN特別首脳会議で米財界代表ら来賓と話すキャンベル氏(右)[2022年5月12日、ワシントンDC](C)REUTERS/Elizabeth Frantz
アメリカの対アジア安全保障政策を読み解く上で、カート・キャンベル氏の発言は常に注目を集めてきた。有力シンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」共同設立者として政策立案に影響力を持ち、オバマ政権では国務次官補として「アジア回帰政策(Pivot to Asia)」の推進役を担った。戦略3文書改定で新たな局面を迎える日米同盟のキーパーソンは、いま何に注目しているのか。

   カート・キャンベルは、バイデン政権でホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の「インド太平洋調整官」を務めている。彼はまた、ワシントンのパワー・カップルの一人でもあり、妻のラエル・ブレイナードは連邦準備理事会(FRB)の副議長だ。これまでキャンベルは長くアジア政策を担い、オバマ政権で国務次官補(東アジア・太平洋担当)、クリントン政権では国防次官補代理(アジア・太平洋担当)を務めた。「私はこれまで30年以上、米日関係に取り組んできて、幸運に恵まれてきましたが、難しい局面もありました」。

   1月18日、Foresight寄稿者のブルース・ストークスが単独インタビューを行った。

アメリカは「第5条」に固い意志で関与する

――(1月13日の日米首脳会談で)ジョー・バイデン大統領は岸田文雄総理に「これほど日本との距離が近づいた時代は今までなかった」と述べました。

   日米同盟の中核には、厳しい安全保障環境と、日米安全保障条約第5条(※)への関与について明確にするというアメリカの固い意志があると強調することが重要です。

※日米両国が、「日本国の施政の下にある領域」への武力攻撃を「自国の平和および安全を危うくするもの」と認識し、「共通の危険に対処する」としている。

   我々は、とりわけ日本の周辺地域における安全保障環境の悪化に直面してきました。北朝鮮は実際に挑発行為を行っていて、我々が過去に行ってきたような外交の再開にもほとんど関心がない。そして軍備増強に邁進する中国、非常に危険で挑発的なウクライナ侵攻に踏み切ったロシア。こうした周辺環境を背景に、岸田総理は「新しい能力(反撃能力など)」強化のため防衛費増額の一連のプロセスに取り掛かりましたが、最も重要なことは、米日関係を強化することです。

   多くの場合、それまでと違う方針をとると決めた国は、単独で実行します。今回、日本はアメリカと緊密に連携してこれを実現しつつあります。その協力および調整のレベルは、私が過去に経験したことのないほどです。軍事的課題や計画、計画遂行上の問題、指揮統制、および不測の事態への対応の検討などが確実に行われるよう、米日間で可能な限りの調整を行いながら現在すすめられています。

――アメリカ政府は、日本に対してさらに多くを求めるのでしょうか。

   米日のパートナーシップは複雑で、様々な面があります。その一つが在日米軍基地です。日本は米軍が自国内の基地から前方展開する能力を提供しており、世界のどの国よりも手厚いホストネーションによる支援です。我々はこうした取り組みを継続したいと考えています。日本の防衛だけでなく、その他の有事対応への足がかりとなるのです。二つ目は、両国の共同の取り組み、例えば軍事基地・施設の共同使用や合同演習などはもっと必要です。自衛隊と米軍はさらに一体性を強化しなければなりません。そして最後が、日本が戦力そのものに投資することでしょう。我々が望むのは、日本が海・空の戦力をアップグレードして、米軍が行うような複合的な活動によりうまく対応できるようになることです。

戦後アメリカ外交「最大の成果の一つ」

――今後、アメリカのアジアにおける拡大抑止、とくに「核の傘」が変わるとしたら要因は何でしょうか。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
ブルース・ストークス(Bruce Stokes)(ぶるーすすとーくす) ジャーマン・マーシャル財団客員シニア・フェロー/英・王立国際問題研究所アソシエイト・フェロー。「ナショナル・ジャーナル」誌特派員、外交問題評議会上級フェローなどを歴任、1997年にはクリントン政権「Commission on United States-Pacific Trade and Investment Policy」のメンバーとして最終報告「Building American Prosperity in the 21st Century」を執筆している。2012年から2019年にかけてはピュー・リサーチ・センターで国際経済世論調査部ディレクターを務め、多岐にわたる項目について日本人の意識調査を実施した。
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