
欧米の有力企業では相次いでインド系のCEO(最高経営責任者)が誕生している。IT(情報技術)業界でのインド系の活躍は広く知られているが、最近では金融、食品・消費財、さらにはファッションといった業種でもインド系のトップが珍しくない。なぜインド系ビジネスマンがこれほど存在感を強めているのか、彼らのバックグラウンドや経歴から探ってみたい。
ITトップの新顔はユーチューブCEOのニール・モハン
「数字に強い」とされるインド系の強みが発揮されるのがIT業界。マイクロソフトCEOのサトヤ・ナデラはインド南部の古都ハイデラバード出身。技術系の私立大では数少ない名門マニパル工科大や米ウィスコンシン大などで学び、1992年マイクロソフトに入社した。クラウド・コンピューティング部門で活躍し、2014年にCEOに就任。約3000億ドルだった同社の時価総額を一時2兆ドル超とし、アップルを抜いて世界最大規模に押し上げた。
彼と肩を並べる存在がグーグルのサンダー・ピチャイ(本名ピチャイ・スンダララジャン)。南部タミルナドゥ州出身で、インド工科大(IIT)でも最難関のカラグプル校卒、米スタンフォード大やペンシルベニア大ウォートン校などの名門で学んだ。2015年CEO、2019年からは親会社アルファベットのCEOに昇格した。

続いて「巨人」IBMを率いるのがアルビンド・クリシュナ(61)。北部ウッタラカンド州デラドゥン出身。IITカンプール校卒。2020年にCEO就任、21年からは会長も兼務している。
新顔で言うと、アクセンチュアやダブルクリックを経て、2007年にダブルクリックを買収したグーグルに転じ、2023年2月に米ユーチューブのCEOに就任したばかりのニール・モハン(49)がいる。

さらに、21年にツイッターのCEOに就任したものの、22年10月に同社を買収したイーロン・マスクによって解任の憂き目に遭ったのが、パラグ・アグラワル(38)。北西部ラジャスタン州出身でIITボンベイ校、スタンフォード大卒のエリートだ。
世銀トップに指名されたアジェイ・バンガ
金融やコンサルタントの世界では、米デロイトCEOのプニット・ランジェン(61)、2012年から15年までドイツ銀行のCEOを務め2022年に亡くなったアンシュ・ジェイン(享年60)らがよく知られるが、今年2月、ジョー・バイデン米大統領から世界銀行の次期総裁候補に指名されたのがアジェイ・バンガ(63=冒頭写真)。黒いターバンを巻いたシーク教徒だ。
幹部軍人の子息として古都プネーに生まれ、デリー大の名門

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