日本のサステナブルな食生活のカギは「タンパク質の多様性」――肉の消費量が減少するドイツとの比較
世界の人口増に伴い、食料需要量は増加する見通しだ。三菱総合研究所によると、2050年には、2010年比で1.6倍に増加する。そのうち、とりわけ肉・卵・魚・乳などの「タンパク源」の増加率は高く、1.7倍に増加する。(図1)
この著しい増加の理由は(1)人口増加、(2)経済成長による肉需要の増加だ。
一方で、人口や経済成長が成熟期を迎える国では、高齢化等の影響もあり需要増のペースが落ち着くか逆に減少に転じる傾向がある。減少傾向が特に強い国のひとつがドイツだ。(表1)
表1:G7とBRICSの肉の国内消費仕向量変化率・人口増加率(1990-2019)
ドイツでは、一体何が起きているのか? その考察から、世界的な食料需要増による地球の持続可能性低下への対応策が見えてくるかもしれない。
肉の消費量は独で減少傾向、日本は増加
国別の動物性タンパク源の国内消費仕向量1(図2、以降消費仕向量という)に示すように、ドイツでは1990~2019年の約30年の間に動物性タンパク全体が減少傾向にある。これは日本にも共通している。しかし、肉に着目してみると、ドイツでは減少傾向、日本では増加傾向にあることがわかる。
ドイツでの肉の消費仕向量の減少の理由として考えられるのが、タンパク摂取源の代替だ。
とりわけ、ドイツではプラントベースフード市場2の拡大が著しい。USDA(アメリカ合衆国農務省)のレポート3によると、ドイツでは、2022年時点で800万人(人口の10%)がベジタリアン、158万人(2%)がビーガンを自認。10年前の調査時にはビーガンを自認する人が10万人だったところから、急激に成長している。
また、人口の55%が「パートタイム・ベジタリアン」または「フレキシタリアン」だという4。ドイツの食品小売における代替肉売上高は、2021年には前年比32%増の7億2000万米ドル超となっている。この増加傾向を牽引しているのは、女性・若年・高学歴層だ。
植物性シフトの背景にある気候変動影響への懸念
従来、タンパク源のうち肉の割合が高かったドイツにおいて、消費者はどのような理由で食生活を変化させているのだろうか。
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