人民は理解してくれない

執筆者:名越健郎 2009年6月号
エリア: アジア

 北朝鮮が予告通り、人工衛星と称して発射した弾道ミサイル、テポドン2号改良型の開発・製造経費は推定3億ドル。コメなら100万トンに相当し、韓国当局者は「北朝鮮の1年間の食糧難を解消できる分量」と指摘した。 金正日労働党総書記も先軍政治の矛盾は認識しているらしい。労働新聞によれば、総書記は「衛星発射成功を誇りに思う」としながら、「その分の予算を国民のためにつぎ込めず心苦しく思う。それでも人民は理解してくれるだろう」と述べ、涙を流したという。 韓国や米国のラジオ放送は、「発射失敗」を繰り返し放送しており、失敗だったことはいずれ口コミで社会に広がるだろう。発射強行には北の弱さも読み取れる。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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