「AI vs. AI」の株主総会が現実に? AIはいま、市場の何を変えつつあるか

執筆者:小平龍四郎 2023年9月4日
ビジネスに活用できるAIサービスは急拡大している[東京ビッグサイトで開催された「第7回 AI・人工知能 EXPO」=2023年5月10日、東京都]
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は朝までチャットGPTと語るという。生成AIは膨大な学習を行う「究極のゼネラリスト」。これを使った株主総会の想定問答作成では商用サービスが始まるが、もちろん経営側に異議を唱えるアクティビストのAI活用もあり得るだろう。金融のリスク管理モデルなどにも影響必至とされるAIによって、市場は大きく変貌する。

 もはや生成AI(人工知能)への無関心を装うのはかなり難しい。文書作成は言うに及ばず、動画や画像、図表の作成さらには質疑応答など、人間のあらゆる知的活動を代替しうるように見えるからだ。「日進月歩」ならぬ「秒進分歩」のテクノロジーはマネーを引きつけ、開発はさらに加速していく。

 この先、どんな世界が開けていくのか。生成AIは社会を劇的に改善させる神か、それとも大混乱に陥れる悪魔か。2つの見方が激しく交錯するのが、テクノロジーと親和性の高い金融・株式市場である。

「究極のゼネラリスト」を相手に「壁打ち」

問い:生成AIは世界の金融市場をどのように変えるでしょうか?
答え:AI(人工知能)が金融市場にもたらす変化は多岐にわたります。以下に、AIが金融市場をどのように変えるかに関するいくつかの考察を述べます。

①高度なアルゴリズム取引:AIは既に高頻度取引(HFT)のようなアルゴリズム取引に使用されています。これにより、取引の実行スピードが向上し、市場の効率が高まります。しかし、これには市場の乱高下を引き起こすリスクも伴います。
②リスク評価と管理:AIは顧客のクレジットリスクや投資リスクを評価するのに役立ちます。大量のデータを解析する能力により、より正確で個別化されたリスク評価が可能となります。個別化された金融製品:AIは顧客のニーズやリスク許容度に応じて、オーダーメイドの金融製品やサービスを提供するのに役立ちます。
③フロード検出:不正な取引や詐欺の検出にAIを使用することで、リアルタイムでのフロードの検出と防止が向上します。
④チャットボットとアドバイザー:金融機関はAIを利用したチャットボットを使用して、顧客の問い合わせへの対応を行ったり、簡単な金融アドバイスを提供することができます。
⑤投資戦略の最適化:AIは様々なデータ源を解析して投資の洞察を得るのに役立ち、投資家がより賢明な投資決定を下すのを支援します。
⑥監督と規制:規制当局はAIを使用して市場の不正行為を検出し、監督を強化することができます。しかしながら、AIの金融市場への導入には議論もあります。AIの決定プロセスは常に透明ではなく、誤った予測や判断が経済的な損失を引き起こす可能性があります。また、過度な依存は市場の安定性を損なう可能性もあります。したがって、AIの導入と利用は注意深く、適切な規制や監督の下で行う必要があります。

 お察しの方もいるだろうが、上記のやりとりの問いは筆者、答えはチャットGPT(GPT-4)によるものだ。本稿の執筆に際して論点整理のために聞いてみたのだが、想像以上に包括的で的確と思われる内容だったので、あえて全文掲載した。書き手の視点や独自のデータなどを書き加え、AI独特の平板な文体を修正すれば、立派に「原稿」として成立すると思うが、どうだろう。

 生成AIに論点整理などをさせ、その回答に基づいてさらに思考を進ませるといったやりとりを、テニスなどの1人練習に模して「壁打ち」という。膨大な学習量を誇る生成AIは究極のゼネラリストなので、没個性的だが論点の見落としが少ない。ゼミの発表の準備に使う大学生は相当の数に上るというのも宜なるかなだ。「チャットGPTを使うなといっても使うから、最近は使ったということを正直に申告せよと指導している」。某有名大学の教授から、そんな話も聞いた。

「AIとアクティビズム」が焦点に

 究極のゼネラリストとしての生成AIの特性を利用するサービスも、株式市場には登場している。……

カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
小平龍四郎(こだいらりゅうしろう) 日本経済新聞社論説委員兼編集委員。1988年、早稲田大学第1文学部卒。同年、日本経済新聞社入社。証券部記者として「山一証券、自主廃業」や「村上ファンド、初の敵対的TOB」「カネボウ上場廃止」などを取材。欧州総局、論説委員、アジア総局編集委員、経済解説部編集委員などを経て現職。日経本紙コラム「一目均衡」を10年以上執筆している。著書に『グローバルコーポレートガバナンス』『アジア資本主義』『ESGはやわかり』(いずれも日本経済新聞出版社)がある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top