Weekly北朝鮮『労働新聞』 (31)

2019年よりも厚遇された金正恩訪露(2023年9月17日~9月23日)

執筆者:礒﨑敦仁 2023年9月25日
エリア: アジア ヨーロッパ
9月17日、沿海州水族館でイルカショーを観覧する金正恩(前列中央)。その左後ろに李秀容書記、崔善姫外相、朴泰成書記の顔も見える(『わが民族同士』HPより)
金正恩は、プーチンとの首脳会談後ウラジオストクに移動。軍施設の訪問や劇場でのバレエ鑑賞、水族館見学などロシア側の厚遇ぶりが顕著な日程で、金正恩も予定を繰り上げることなく帰国した。一方で、署名から21年の「日朝平壌宣言」は言及されず、「9月平壌共同宣言」から5周年を迎えた韓国については、当時の融和ムードとは打って変わって猛非難が展開されている。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 9月17日付は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がロシア極東のコムソモリスク・ナ・アムーレからウラジオストクに移動したことを報じた。クネビッチ軍用飛行場を参観したほか、太平洋艦隊基地を訪問している。いずれもセルゲイ・ショイグ国防相や海軍司令官が出迎えており、ショイグは午餐で「両国国防省間の親善と協調をさらに進化させていく意志」を披瀝した。その後の金正恩とショイグの会談では、「両国の兵力と国防安全分野の戦略的戦術的協同と協調、相互交流をさらに強化していくうえで提起される実務的諸問題」について建設的な意見交換を行ったという。

 夕方になるとマリインスキー劇場沿海州別館でバレエ公演「眠れる森の美女」を参観した。それまでの軍関連施設では軍幹部の随行が目立っていたが、公演には崔善姫(チェ・ソニ)外相のほか、呉秀容(オ・スヨン)党書記、朴泰成(パク・テソン)党書記らテクノクラートも同席した。

 18日付も、金正恩がウラジオストク市内の各所を参観したことを報じた。前回首脳会談の開催場所であった極東連邦大学を視察し、自国留学生と記念写真を撮影するなどしている。2015年から東方経済フォーラムの会場にもなっている同大学キャンパスは、2012年に建設されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)開催会場を転用したものだが、当時、中央アジア諸国の労働者に交じって北朝鮮から派遣された労働者も数多く建設事業に携わっていた。……

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top