Weekly北朝鮮『労働新聞』 (66)

祖父・父よりもゆっくりと進む金正恩への個人崇拝(2024年5月19日~5月25日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年5月27日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
朝鮮労働党中央幹部学校の教室内には金日成、金正日と並んで金正恩の肖像画が掲げられていることが確認された(『労働新聞』HPより)
朝鮮労働党中央幹部学校の新校舎にはマルクスとレーニンだけでなく、金日成、金正日、そして金正恩の肖像画も掲げられていたことがわかった。3人の肖像画が並んだことが確認されたのはこれが初めてであり、現指導者への個人崇拝「偉大性教養」の進展は、4代目への継承を占う上でも注目される。『労働新聞』注目記事を毎週解読

 5月22日付は、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が朝鮮労働党中央幹部学校の竣工式に出席して演説を行ったと4ページかけて報じた。新校舎の壁面にマルクスとレーニンの大きな肖像画が掲示されたことは既に明らかになっていたが、もう片方の壁面には金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)とともに金正恩の肖像画も掲げられた。3人の肖像画が並んだことが確認されたのは今回が初めてである。

 前回の本欄では、「記事に付された写真を見る限りにおいて、中央幹部学校の校舎の壁面に掲げられたのが金日成、金正日の肖像画ではなく、マルクスとレーニンの大きな肖像画であった」と述べた。教室内には従来通り金日成と金正日の肖像画が掲げられたことが確認できたものの、その隣にある金正恩の肖像画は見事にトリミングされていた。つまり、北朝鮮メディアは3人の肖像画が初めて並んだ竣工式の様子を満を持して報じたのである。

朝鮮労働党中央幹部学校の全景。向かって左の建物にはマルクスとレーニン、右の建物には金一族の3人の指導者の肖像画がある(『労働新聞』HPより)

 今年40歳になった金正恩が、先代指導者と完全に同列、もしくはそれ以上の存在であることを意味するが、これまでにも、中国やキューバの首脳が平壌を訪れた際などに、金正恩の肖像画が掲げられたことはある。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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