ダウン症の子供の化石が物語るネアンデルタール人の「共感能力」

2024年7月27日
カテゴリ: 医療・サイエンス
洞窟の中でネアンデルタール人の家族が生活する様子[クロアチア北部・クラピナのネアンデルタール博物館展示](C)REUTERS/Nikola Solic
遥かな昔、現在のスペイン東部にあたる地域で、ネアンデルタール人の小さな集団の中で推定6歳のダウン症の子供が暮らしていたことが分かった。最古のダウン症の症例であるだけでなく、現生人類の近縁種であるネアンデルタール人が、思いやりをもってお互いの世話をしたことを示唆するものだと研究者は述べている。

[ロイター発]化石はスペイン・バレンシア州のシャティバ市近郊にあるコバ・ネグラ遺跡で発見された。研究は学術誌『Science Advances』に掲載された。化石の正確な年代は不明だが、ネアンデルタール人は27万3000年〜14万6000年前の間にコバ・ネグラ遺跡に住んだとされる。

 子供の性別は確実には判明していないものの、研究チームはこの子供に「ティナ」という愛称をつけた。化石は1989年に発掘され、頭蓋骨の側面から底部を占める側頭骨の右側だった。側頭骨には、脳を守り、外耳道を囲み保護する役割がある。この化石からは様々な身体的特徴に加え、バランスを保ち頭の位置の感知する役割がある三半規管の異常や、聴覚と関係している内耳の蝸牛の縮小が見てとれた。

 内耳の形は完全に保たれていたが、その重要性が認識されたのはごく最近になってからだ。ティナの内耳は、ダウン症の人だけに見られる特徴的な形をしていた。死亡時の年齢も内耳の発達状態に基づいて推定された。

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