かつて緑豊かだったサハラ砂漠、未知の人類の系統が住んでいた

2025年4月29日
タグ: 歴史
エリア: アフリカ
リビア南西部タカールコリ岩陰遺跡からの景色。7000年前に牧畜を営んだ集団の女性2人の遺体が眠っていた(C)Sapienza University of Rome/REUTERS
アフリカ北部の11カ国にまたがり、総面積は中国やアメリカの国土に匹敵するサハラ砂漠は、およそ1万4500年前から5000年前まで緑豊かなサバンナで水にあふれ、多様な動植物が生息していた。「緑のサハラ」と呼ばれるこの時代、7000年前にリビアに暮らしていた人のミイラからDNAが抽出され、外の世界から閉ざされて生きた謎の人々がいたことが明らかになった。

[ロイター]研究チームは、「緑のサハラ」に暮らした人のゲノムを初めて解析した。DNAは、リビア南西部のタカールコリ岩陰遺跡で埋葬されていた2人の女性の人骨から採取した。遺体は自然にミイラ化したもので、これまで発見された中で最古級のミイラだと考えられている。研究成果は、4月2日に学術誌『Nature』に発表された。

「当時、タカールコリ周辺は現在のような乾燥地帯ではなく、湖の近くに広がる緑豊かなサバンナだった」とマックス・プランク進化人類学研究所の考古遺伝学者で、論文の共著者のヨハネス・クラウゼ氏は語る。

 ゲノム解析の結果は、タカールコリの女性たちが、これまで知られていなかった独自の人類系統に属していたことを明らかにした。この人々の系統は、サハラ砂漠が人間の住めない乾燥地帯と再び変貌するまで、サハラ以南やユーラシアの集団から、数千年にわたり遺伝的に隔絶されていたという。

7000年前の女性。遺体は自然にミイラ化した(C)Sapienza University of Rome/REUTERS

 調査から、タカールコリの人々が家畜を飼い牧畜を行っていたことがわかっている。遺跡からは石器や木製・骨製の道具、土器、編みかご、彫刻された小像などの遺物が出土した。

カテゴリ: 医療・サイエンス
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