
別の研究では、昏睡状態や植物状態にある患者の約4分の1は、実際には意識があっても外に向けて表現できないとの報告もある。この研究は、そうした状況をより正確に見極めることにつながるという(C) REUTERS/Fabrizio Bensch
[ワシントン発/ロイター]意識のもととなる脳の部位を特定するため、国際的な研究チームが256人の被験者の脳から、電気的活動やそれに伴い発生する磁場、そして血流を測定した。研究は米国、欧州、中国の12の研究機関で行ない、被験者にはさまざまな画像を見せ各脳領域の活性を観察した。
その結果、ヒトの進化に伴い発達した「思考の中枢」の前頭葉ではなく、視覚や聴覚を処理する脳の後方の領域から意識が生まれている可能性が示唆された。
なぜ、意識の在処を知ることが重要なのか。4月30日に学術誌『ネイチャー』に掲載されたこの研究を率いた米シアトル・アレン研究所の神経科学者クリストフ・コッホ氏は、研究の意義についてこう語る。
「意識の基質は何か。また、大人や、言葉を喋る前の子供、胎児、犬、ネズミ、イカ、カラス、ハエなど、誰が意識を持つのか。これらを突き止めるには、意識に関連する脳のメカニズムを特定する必要がある。意識を概念として理解するためにも、臨床応用の観点からも意味深い」(コッホ氏)
実験では、被験者にさまざまな物体の画像や人の顔の画像を見せた。
「意識とは、トースターの絵や人の顔を見たときに感じる感覚のこと。感じ方そのものが意識であり、ボタンを押すことや、『人が見える』と発言することなど、何かを感じたことによって行う行動とは別物である」とコッホ氏は説明する。
今回の研究では、意識に関する2つの有力な説が検証された。

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