Weekly北朝鮮『労働新聞』
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金正恩、北京訪問で対中関係修復へ(2025年8月24日~8月30日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年9月1日
エリア: アジア
金正恩の最高指導者としての経験は習近平より長い[朝鮮人民軍総参謀部直属の特殊作戦訓練基地を訪問した金正恩国務委員長=2025年8月27日](C)AFP=時事
金正恩国務委員長が戦勝記念行事のため「間もなく」訪中すると8月29日付1面トップで報じられた。ロシア一辺倒を修正し、対中関係を改善することで戦争特需の終了や米トランプ政権の政策変化に備えると見られる。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が2019年1月以来、6年8カ月ぶりに訪中する。中朝首脳が対面するのは、習近平国家主席が訪朝した2019年6月以来となる。8月29日付1面トップは、金正恩が中国人民抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利80周年記念行事に出席するため、「間もなく」訪中することを報じた。

 金正恩がマルチの場に出ていくのは事実上初めてである。あえて挙げるならば、2019年6月にドナルド・トランプ米大統領と3回目の対面を果たすために板門店(パンムンジョム)の韓国側地域を訪問した際、その場に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も短時間居合わせただけである。

 歴史的には、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の外遊先が中露両国だけだった一方、金日成(キム・イルソン)主席(1972年12月以前は首相)は頻繁に国外に出ていた。

 金日成が最後にマルチのイベントに参加したのは、ユーゴスラビアのヨシップ・ブロズ・チトー大統領の葬儀だったとされる。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治外交。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、『北朝鮮を読み解く』(時事通信社)、共著・編著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)、『北朝鮮を解剖する』(慶應義塾大学出版会)など。
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