小泉の「826人離党」「ステマ」問題は収束せず
自民党総裁選挙の投開票日まで残すところあとわずかとなった今月1日の夕方、最有力と目されている小泉進次郎農水大臣の姿は成田空港にあった。
小泉「本日1日から明日2日までASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3農林大臣会合への出席のため、フィリピンに出張いたします」
報道陣に囲まれた小泉は、大臣としての公務のためフィリピンで開かれる国際会議へと出発することなどを縷々説明した。その際、報道陣の1人から以下のような質問が投げかけられた。
記者「一部週刊誌の報道で、神奈川県連で826人が離党させられていたという報道があったが、これについての見解を伺いたい」
小泉「はい。既にコメントを出したとおりであります」
2度ほど軽くうなずき受け流した小泉は、ほかの質問に移った。
一部週刊誌の報道とは9月30日に報じられた「文春オンライン」の記事だ。小泉が会長を務める自民党神奈川県連で、神奈川9区の支部長を務めていた中山展宏前衆院議員が勧誘した党員826人が「勝手に離党させられていた」という内容である。記事では中山本人が取材に答え詳細を説明しているほか、「離党させられた」とされる826人の多くが昨年の総裁選では高市早苗前経済安保担当大臣を支持していたという。
つまりこの記事は、小泉の陣営が意図的に高市に近い826人を離党させたのではという論調でまとめられているのだ。小泉は成田での取材に答える前に「週刊文春オンラインの記事は、事実に反する内容を印象付けるもので、自民党総裁選に不当な影響を与えかねない記事であり極めて遺憾」等とするコメントを発表していた。
コメントの中で小泉は「本件は、(略)本年6月に自民党神奈川県第9選挙区支部において、支部長の衆院選落選に関連して起こったものです。これ自体参議院選挙以前の話であり、参院選の敗北等に伴う総裁選挙の開催に関連しようがない出来事」(小泉本人のXより)と反論し、記事の訂正を求める考えを示した。
これを読む限り小泉の主張には一理ありそうだ。しかし、小泉陣営内からは「総裁選に影響するかも」と警戒感が高まっている。陣営で広報責任者としてネット対応の中核を担っていた牧島かれん元デジタル大臣の事務所が小泉の出馬会見に際して、小泉に好意的なコメントのほか、「ビジネスエセ保守に負けるな」などと高市を念頭に置いたと見られる例文を示して投稿するよう求める、いわゆる“ステマ問題”に頭を悩ませていた最中の出来事だったからだ。
牧島は26日に陣営の広報班長を辞任したが、牧島が現職の自民党ネットメディア局長であることから野党側は「自民党はこれまでの国政選挙でもおなじようなことをやっていたのでは」などと指摘し、国会で追及する姿勢を見せている。ステマ問題は総裁選後も尾を引く話となりそうだ。
「ステマ問題は確実に党員票に影響を及ぼすだろう。特に党員の多い首都圏など都市部では深刻と受け止めている」
小泉陣営の一人はそう語り、優勢が崩れかねないと危機感を示す。
“雌伏”の旧安倍派幹部が高市推しで奔走
一方、小泉陣営が最大の敵と見なす高市陣営は党員票を中心に支持を伸ばしそうだ。
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