饗宴外交の舞台裏 (36)

イランの意向を汲んだハタミ歓迎午餐会

執筆者:西川恵 2000年12月号
エリア: 中東

 イランのハタミ大統領が十一月三日までの四日間、イラン大統領としては初めて日本を国賓として訪問した。穏健派のハタミ大統領は昨年三月のイタリア訪問を皮切りに、フランス、ドイツと歴訪し、訪日はこの対西側協調路線の延長線上にあった。 訪問にあたって、日・イ両国の外交当局は慎重に準備を進めた。同大統領のフランス訪問では、歓迎宴にアルコールを出す、出さないで、外交問題に発展したいきさつがあったからだ。 昨年三月、ハタミ大統領はフランスを国賓として訪問する予定だったが、エリゼ宮での歓迎晩餐会についてイラン側は「イスラム教徒はアルコールを飲まないし、ボトルを目にするのも嫌う。テーブルに出さないで欲しい」と求めた。しかしフランス側は伝統的な儀典のやり方であるとして拒否した。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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