牙を研がずに鉛筆を舐める「噛まない番犬」公取委

執筆者:矢吹信 2001年8月号
タグ: 人手不足 日本
エリア: アジア

小泉首相が所信表明演説で強化をうたった公取委。しかし、染みついた負け犬根性は容易には拭えそうにない。「経済・社会の全般にわたる徹底的な規制改革を推進します。さらに、市場の番人たる公正取引委員会の体制を強化し、二十一世紀にふさわしい競争政策を確立します」 今年五月、小泉首相は所信表明演説でこう述べた。首相が所信表明演説で個別行政機関の名を挙げて、ここまで肩入れするのは極めて異例だが、よくよく考えてみれば当然のことかも知れない。理由は三つある。 第一に、かつて「世界で最も成功した社会主義国家」と言われた日本が、市場主義経済への転換を求められていること。そのためには、価格カルテルや入札談合の摘発を積極化し、市場での競争を促すことが欠かせない。第二に、公的事業分野において、既存のガリバー事業者による新規参入の妨害を排除すること。通信の日本電信電話(NTT)や電気の東京電力などが当面のターゲットだ。第三に経済グローバル化への対応だ。世界市場をにらんだ国際的な大型合併問題に、競争促進官庁として機敏に対応しなければならない。

カテゴリ: 社会 経済・ビジネス
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