元チッソ社員と科学者の二人は、人生を賭して原因を突きとめた 人は晩年、かつて関わりを持った痛恨事といかに向き合うのか――。ここ十数年の日本経済における失敗の連鎖を見ても、なぜ、どこで、どう間違えたのか、本来語るべきはずの真の責任者による検証作業は皆無に等しい。 二十世紀、最大にして最悪の公害事件となった水俣病でも事情は同じだった。チッソ水俣工場から、どのようなプロセスと仕組みで原因物質のメチル水銀が排出されたのか、またどのような循環をたどって人に摂取されたのか、徹底解明されるべきその多くが謎のまま残された。メチル水銀を排出したチッソと、対策を怠り被害を隠蔽し続けた行政、この両者からの科学的な検証は発生から五十年近く経った今日にいたるも、全くなされていない。
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