饗宴外交の舞台裏 (52)

英国外交の支柱だったエリザベス皇太后の死

執筆者:西川恵 2002年5月号
エリア: ヨーロッパ

 英女王エリザベス二世の母、エリザベス皇太后が三月三十日、百一歳で亡くなり、四月九日、ウェストミンスター寺院で各国政府の代表も多数参加し、厳かに葬儀が営まれた。 その当日までの四日間、棺は国会議事堂のウェストミンスター・ホールに安置され、一般市民に公開された。皇太后に別れを告げる市民の列は七、八キロに及び、当局は列が絶える葬儀当日早朝まで開放せざるを得なかった。いかに皇太后が国民に愛されていたかを改めて思い起こさせたのである。 エリザベス皇太后は一九〇〇年、スコットランドの貴族の家に生まれた。二三年、国王ジョージ五世の次男アルバート王子と結婚。国王の死去で、長男がエドワード八世として即位したが、離婚歴のある米国のシンプソン夫人との結婚を望んで退位したため、三六年、アルバート王子がジョージ六世として王位を継承した。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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