サムエルソン、ノードハウス著『経済学』(都留重人訳、岩波書店)に紹介されている実話だが、イギリスのある王立委員会が五人の著名な経済学者に行なった諮問に、六通りの違った回答があった。一人で二通りの答えを寄せたのが誰あろう、J. M. ケインズだった。おかしいじゃないですか? と聞かれ、彼は「前提が変われば答えも違う。あなただってそうするでしょう」とすましていたという。このエピソードをサムエルソンは、ケインズは一日に二回だけ正しい時を告げる壊れた時計でありたくなかったのだろうと解釈しているが、この話から「エコノミストが十二人集まれば、少なくとも十三の意見が表明される」というジョークが生まれた。
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