水の未来をシミュレーション小説に描くなら――二〇五〇年八月、OPEC(石油輸出国機構)ならぬOWEC(水輸出国機構)は、水の価格トン当たり二十万ドルを四割引き上げる決定を下し、輸入国側を震え上がらせた。 この結果、飲料水を輸入に頼る中国、インド、英国、ドイツなどの国々の経済は重大な打撃を受けるものとみられ、元、ルピー、ユーロなどの通貨は軒並み売り攻勢を浴びせられている。 日本はOWECの有力メンバーだが、国内には水の輸出に反対する空気も強く、二十一世紀初頭、「脱ダム宣言」などで継子扱いされたダムが貯水用としてにわかに脚光を浴びはじめている――とまあ、こんな具合いになるのではないかと思われるほど、水不足は地球規模で広がりつつある。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン