チュニジアに端を発し、エジプトでの政権転覆に勢いを得たアラブの民衆運動は、ドミノ倒しさながらに、リビア、アルジェリア、モロッコ、イエメン、バーレーンなど、中東・アフリカ諸国に大きな広がりを見せた。この民衆革命の影響が思いがけないところにも波及し、タイの観光当局者の顔を曇らせている。これから真夏に向けてタイを訪問する予定のアラブ人富裕層が、軒並みキャンセルするのではないかというのだ。とにかく大人数でホテルに宿泊し、金銭を湯水のように使ってくれるアラブ人は、有難いお客である。例年であれば、6月から8月にかけてのバンコクは、アラブ人の恰好の避暑地として活況を呈するはずなのだ。
タイには世界中から観光客が吸い寄せられてくるが、今最も熱いタイの観光の目玉は、「医療ツーリズム」だ。医療ツーリズムとは、病気や怪我の治療を目的とする海外渡航のこと。外科手術や脳梗塞の治療などは、その後のリハビリ治療が往々にして長期化するため、患者に同伴する家族はホテルに長期宿泊し、看護の傍らで観光を楽しみ、時間を潰すことが日常化する。このため観光産業も一緒に潤う医療ツーリズムの経済効果は大きい。

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