「モスクワは涙を信じない」

執筆者:名越健郎 2012年3月16日
エリア: ヨーロッパ

 プーチン首相が約64%の得票で当選した3月4日のロシア大統領選は、ほぼ予想通りの展開となり、最大のサプライズは、支持者集会での勝利演説でプーチン氏が流した涙だった。

 マッチョなイメージで売るプーチン氏が公の場で涙を流したのは初めてだろう。中流層の反プーチン運動の高揚で追い詰められただけに、危機を脱した安堵感や今後への不安感など複雑な思いが交錯したようだ。

 エリツィン元大統領はしばしば涙を見せたが、強い指導者が大衆受けするロシアで、「涙もろい大統領」は政治的に好ましいとは言えない。プーチン氏のイメージを変えた落涙は、政治的運命にも影響するかもしれない。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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