中国人が買ったブルゴーニュ

執筆者:国末憲人 2012年9月2日
エリア: ヨーロッパ

最高級のブルゴーニュワインを産する村として、フランス中部の「ジュヴレ・シャンベルタン」を知らない愛好家はいない。2000年にわたるブドウ栽培の歴史を持ち、皇帝ナポレオンが愛飲し、現在も九つのグラン・クリュ(特級)の畑を擁している。


この村にある城「シャトー・ド・ジュヴレ・シャンベルタン」とこれに付随する2ヘクタールのブドウ畑が、中国資本によって買収された。8月に明らかになり、「フランス人の心が中国人に奪われる」などと、結構な騒ぎになっている。


同じフランスワインの産地でも、南西部ボルドーでは醸造元を「シャトー」(城)と呼ぶが、ブルゴーニュではそう呼ばない。だから「シャトー・ド・ジュヴレ・シャンベルタン」は、ワインの醸造元の意味ではなく、本物の中世のお城である。フランス革命の際に民間に払い下げられたが、近年荒廃が目立っていた。周囲に広がるブドウ畑は、19世紀半ばに城とともに買い受けたフランス人家族が所有していた。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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