ブックハンティング・クラシックス
(61)
英外交官が30年の「格闘」から学んだ中国の実像と未来
キッシンジャーは「無視するには大きすぎ、抱き締めるにはあまりに抑圧的であり、影響を及ぼすのは難しく、この上なくプライドが高い、という特別なカテゴリーに属する」とのオルブライト元米国務長官の中国評をそのまま引用し、中国を語っている(『キッシンジャー回想録 中国』、岩波書店、2012年)。国際政治の修羅場を数多く潜り抜けてきた彼にとっても、中国は外交ゲームの定石が通じない、あまりにも手強い相手だったということだろう。おそらく1972年にニクソン・毛沢東会談を成功させて以来の、彼なりの長い中国体験に基づく率直な感想に違いない。 この本は、タフで老獪このうえないキッシンジャーですら戸惑わせてしまうような中国を相手に、文字通り「格闘」し続けた「あるイギリス外交官の回想」である。だが、たんなる「外交官の回想」ではない。飽くまでも「中国との格闘」に30年(1962-1992)をかけた「イギリス外交官の回想」なのだ。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン