堕ちゆく世界の迷走
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長期化する「日中冷戦」をどう生き延びるか
「冷戦(cold war)」とは、「武力を用いず、経済・外交・情報などを手段として行う国際的対立抗争」をいう(三省堂・大辞林)。標準的な辞書の定義によれば、今の日中関係は明らかに冷戦状態にある。在中国日本大使館への投石、日系企業に対する放火、略奪。映画「北京の55日」のモデルになった清朝末期の義和団事件を彷彿とさせる、反日デモの映像は全世界に繰り返し流された。 公安当局による誘導、整理をはじめ、デモの裏側には中国当局の存在があったと、世界中のメディアが報じている。中国当局の傍若無人な言動を見る限り、そうだったとしても驚くに当たらない。ヤクザの出入りよろしく、日本政府による国有化に抗議して千艘の漁船が尖閣諸島に繰り出した、とも伝えられた。彼らの正体も同じようなものだろう。 誰しも抱くそんな疑問に読売新聞が正面から答えてくれた(9月21日付)。「釣魚島(尖閣諸島の中国名)に向かう漁船には、当局から10万元(約125万円)の補助金が出るぞ」。波止場付近にある市場で、漁船5隻を持つ船主が明かした。漁船乗組員の月給は3000元(約3万7500円)前後という同地区で、10万元は大金といえる――。浙江省石浦地区の漁港を訪ねた記者のスクープだ。
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