80時間世界一周 (2)

1時間で集まったジャカルタの10万人デモ

執筆者:竹田いさみ 2004年10月号
エリア: アジア

 インドネシアの首都ジャカルタで政治をウォッチする格好の場所はといえば、日本大使館にほど近い四軒の大型ホテルが密集しているロータリーであろう。今年は九月の大統領選決選投票など大型の選挙が三つもある。去年、今年と例によって何度もジャカルタを訪れることになった。 このロータリーの真ん中には大きな噴水があり、日曜日には憩いの場所として家族連れが集まる。ここから独立記念塔モナスや大統領官邸までは一本道。デモ隊を繰り出す集合場所ともなる。そのためロータリー付近には、海外の新聞社やテレビ局も支局を構える。 ある時、タクシーに乗ってロータリーにさしかかると、道路の中央分離帯に数人の若者が立ち、噴水の近辺には数十名の若者が集まっているのが眼に飛び込んできた。ホテルのコーヒーラウンジから見渡していると、三十分後には数百人に膨れ上がり、一時間後には無数の群集で埋め尽くされて地面が見えないほどになった。これは新興政治勢力の福祉正義党が仕掛けたデモ行進で、十万人が動員されていた。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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