饗宴外交の舞台裏 (84)

カブールの日本レストラン

執筆者:西川恵 2005年1月号
エリア: アジア

 アフガニスタン国民による初の直接選挙で大統領に選ばれたカルザイ大統領の就任式が十二月七日、首都カブールで行なわれた。参列した外交団の中に、新生アフガンの初代日本大使だった駒野欽一氏(現在は本省でNGO・アフガン支援調整等大使)の顔もあった。 駐アフガンの日本大使館開設(二〇〇二年二月)の任を負い、この九月まで二年七カ月にわたって在勤した同氏にとって、アフガンは忘れがたい国だ。赴任して間もなく腸チフスを患った。テロ情報で行事出席を取り止めることも一再ならずあった。しかし一方で、「日本大使公邸には要人がしょっちゅう出入りする」と言われるほどのネットワークを築いた。同氏はペルシア語が専門で、現地の人々と通訳を介さずに意思疎通ができる。しかしもう一つの有力な武器が、日本料理を駆使した食卓外交だった。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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