経済の頭で考えたこと (61)

「中南米の安定」が「米の世界戦略」に与える影響

執筆者:田中直毅 2013年9月17日
エリア: 中南米 北米

 化学兵器を反政府勢力に使ったとされるシリアのアサド政権に対する軍事攻撃に米国民の反対が高まっている。議会承認を求めたオバマ政権の状況把握力を疑問視する声も多い。

 対外関与姿勢において、歴史的転機に立つ米国の現状を捉えた説明として、次の2つが挙がることが多い。

(1)ジョージ・W・ブッシュの対イラク戦争、オバマの対アフガニスタン戦争はいずれも成果というには程遠いものだった。21世紀におけるこの2つの戦争に対する厭戦気分のなかで、とても対シリア戦争に賛同はできないという判断が広がった。

(2)シェール・ガス革命によって中東のエネルギーに対する米国の依存度が低下し、遠くない将来に中東原油からの完全脱却の見通しが実現しそうなところから、地政学上の関心が中東から離れつつある。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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