饗宴外交の舞台裏 (95)

カール大帝のワインを傾けた仏独首脳の「最後の晩餐」

執筆者:西川恵 2005年12月号
エリア: ヨーロッパ

「最後の親密なる晩餐」とフランスの日刊紙は表現した。十月十四日夜、フランスのシラク大統領は退任間近いシュレーダー独首相をエリゼ宮に招き、最後の会食をもった。 一応はワーキングディナーと位置づけられ、夕食会に先立ち会談が行なわれたが、退任するシュレーダー首相が新たな約束をしたり、政治的イニシアチブをとれるわけでもない。会談は形だけのもので、シラク大統領としては食事をとりながら、首相の七年間の労をねぎらいたいとの思いがあったのだろう。 シラク大統領はどんな料理でシュレーダー首相をもてなしたのか。私の問いにエリゼ宮の担当者は「海の幸の盛り合わせです」と言った。それは前菜?「いえこれだけです」。これには私もビックリした。

カテゴリ:
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top