オバマ政権の「優先政策課題」と距離を置き始めた「上院民主党」

執筆者:足立正彦 2014年2月6日
タグ: 中国 アメリカ
エリア: 北米

 バラク・オバマ大統領は1月28日に米議会上下両院本会議で行った「一般教書演説」の中で、2007年(ジョージ・W.ブッシュ政権当時)に失効した大統領貿易促進権限(TPA)を更新する必要性に言及した。ところがその翌日の29日、オバマ大統領が示した優先政策課題を議会でしっかりと支えていかなければならないハリー・リード民主党上院院内総務(ネヴァダ州)がTPA法案に反対し、同法案の審議も行わない方針を示したため、各方面に大きな衝撃が走った。

 とはいえ2014年中間選挙を控えて、オバマ大統領も自由貿易推進を積極的に訴える立場からは後退していた印象を筆者は受けている。「一般教書演説」でオバマ大統領は、「米国の労働者を保護し、米国の環境を保護し、そして『米国製(“Made in the USA”)』とのスタンプが押された新製品の新たな市場を開拓するために」、TPA法案の成立に向けて超党派で取り組む必要があると訴えた。だが、通商政策の重要性について、こうした簡単な言及に留めるだけで、踏み込んだ熱心な発言を敢えて避けていた点が印象的であった。オバマ大統領は議員に対しTPA法案の迅速な承認を直接求めるのではなく、自由貿易に反対したり、慎重な姿勢を示したりしている民主党の中核的支持基盤である労働組合や環境保護団体・活動家に配慮した言い回しをしていたのであろう。こうした言い回しに、中間選挙キャンペーンが本格化する前に自由貿易推進の議論を積極的に訴える難しさが反映されている。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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