タイの老舗「華字紙」論文にみる中国「民主化」の気配

執筆者:樋泉克夫 2014年6月21日
タグ: 中国 日本 タイ
エリア: アジア

 今から半月ほど前になるが、タイで発行されている老舗華字紙『中華日報(電子版)』(6月2日)に掲載されたある論文に接し、先ずは「アンタにだけは言われたくない」と呆れ返った。さらに、東南アジアの華字メディア空間に浸透・拡大する中国の影響力に改めて驚くと同時に、一種の危機感を抱いたものだ。

 論文の筆者は、楊光斌中国人民大学比較政治制度研究所の所長。「タイ政治の難題と“中産階級が民主をもたらす”」と題し、混乱するタイの政治情況を切り口に民主について論じている。以下、同論文を要約してみる。

 

選挙は貧困層のガス抜きか

 近年、エジプト、タイ、ウクライナなどでみられる民主化の過程は、これまで我々にとっての常識、極論するなら民主化への定説とされてきた命題――たとえば公民社会が民主政治の前提・基礎であり、中産階級が民主を招き寄せ、民主こそが民族和解を進める――とは、明らかに異なる過程をみせる。“ある国家の良否を民主の有無に帰す”とはいわれているが、果たして、それは現実的な見解だろうか。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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