今から半月ほど前になるが、タイで発行されている老舗華字紙『中華日報(電子版)』(6月2日)に掲載されたある論文に接し、先ずは「アンタにだけは言われたくない」と呆れ返った。さらに、東南アジアの華字メディア空間に浸透・拡大する中国の影響力に改めて驚くと同時に、一種の危機感を抱いたものだ。
論文の筆者は、楊光斌中国人民大学比較政治制度研究所の所長。「タイ政治の難題と“中産階級が民主をもたらす”」と題し、混乱するタイの政治情況を切り口に民主について論じている。以下、同論文を要約してみる。
選挙は貧困層のガス抜きか
近年、エジプト、タイ、ウクライナなどでみられる民主化の過程は、これまで我々にとっての常識、極論するなら民主化への定説とされてきた命題――たとえば公民社会が民主政治の前提・基礎であり、中産階級が民主を招き寄せ、民主こそが民族和解を進める――とは、明らかに異なる過程をみせる。“ある国家の良否を民主の有無に帰す”とはいわれているが、果たして、それは現実的な見解だろうか。
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