今年3月まで筆者が勤務していた毎日新聞社は、全ての記事に署名を付ける日本では数少ない新聞社であった。言い換えれば、無署名の新聞記事がこれほど広範に流通している国は、少なくとも民主主義諸国では日本をおいて他にないということである。日本の新聞社には今も「記事は無署名でよい」という幹部がいて、「記事は内容が命。誰が書いたかは問題ではない」と言うのを聞いたことがある。ハンドルネームや匿名での書き込みが一般的な日本語のインターネット空間でも、非実名の投稿の正当性を支える論拠の1つとして、「重要なのは発信者ではなく、書かれた内容だ」という主張を目にすることがある。
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