小泉純一郎首相と長年、盟友関係にあった自民党の山崎拓、加藤紘一両元幹事長がよく口にする逸話がある。それぞれの名字の頭文字を取り「YKK」トリオと呼ばれていた一九九〇年代の話だ。 三人は夜な夜な酒食を共にしながら同じ時間を過ごした。いかにして「経世会(竹下派)支配」を打破し、自分たちの時代を築くか。共通の関心事は党内政局にあったが、政策論議にも時間を割いた。冷戦終結、バブル崩壊、政治改革、北朝鮮の核危機……内外の情勢が音を立てて変わる中で話題は尽きなかった。酒席は時に深夜に及んだ。だが、首相が積極的に議論に参加したことはほとんどなかった。「純ちゃん、どう思う?」「えっ?」「今の話、聞いてた?」「いや、他人の意見を聞くと感性が鈍るから」。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン