世界経済をアートにする妙味

執筆者:インゴ・ギュンター 2006年10月号

 世界銀行グループの一員で、途上国投資促進を目的とする国際金融公社(IFC)から、「南南投資」をアートにしようと誘われた時、さほど厄介な企画だとは思わなかった。「南北問題」といえば、北半球の先進国と南半球の途上国の間の問題だ。途上国から途上国への投資を視覚的に表すには、南半球諸国から矢印を伸ばして、また同じところに戻せば事足りると考えたのだ。 ところがIFCの定義によると、「南」に分類される国の過半数は北半球にあり、東ヨーロッパから、旧ソ連諸国、果ては北極海にも及ぶ。近年、「南」から「北」に分類し直されたのは、韓国一国のみである。一方、いうまでもなく、北朝鮮は「南」の国だ。

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執筆者プロフィール
インゴ・ギュンター(いんごぎゅんたー) メディア・アーティスト。1957年生れのドイツ人。ゲーテ大学で、民族学と文化人類学を専攻するとともに、デュッセルドルフのアート・アカデミーでヨーゼフ・ボイスに師事。その後、ナム・ジュン・パイクのアシスタントをしながら、ビデオアートを学ぶ。地球儀をキャンパスに世界情勢を描く手法で知られ、その作品は1994年から99年までの6年間、フォーサイトの表紙を飾った。フォーサイトのフェイスブックの表紙も最近の地球儀アートの1つ。2006年から07年に東京芸術大学客員教授を務めた。
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