私は、食事介助が好きである。できれば他のスタッフと交代してでも食事介助の担当になりたいぐらい楽しいのである。けれど最初から楽しかったかと言えば、決してそうではなく、食事介助が辛いだけの時期もあった。それがいくつかの出来事をきっかけにして待ち遠しい時間となり、そしてその奥深さを感じるようになっていった。今回は、食事介助について私が体験したエピソードを紹介しながら、食事を介助するとはどういうことなのかを考えてみたい。
食事介助の苦痛
食事介助は、入浴介助、排泄介助にならぶ、いわゆる3大介護のひとつである。介護現場では身体介護の基本である一方で、介助の仕方によっては、誤嚥性肺炎の原因になったり、あるいは食物をのどに詰まらせて窒息させてしまうこともあり、生命にもかかわる点で技術や知識、経験を要するケアであるとも言われ、介助中は結構緊張感を強いられることも多い。だから、食事介助が楽しい、などというのは介護職員としてはある意味で不謹慎な、不真面目な言葉としてとらえられてもおかしくないのかもしれない。

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