九月十二日にローマ法王が南ドイツのレーゲンスブルク大学で行なった説教をめぐって、イスラーム諸国と西欧諸国の間では、激しく緊張したやり取りが交わされた。昨年末から今年三月にかけて吹き荒れたムハンマド風刺画非難の嵐が静まってから半年もたたない頃である。「イスラーム」をめぐるトラブルの頻度は確実に増している。 まず、ローマ法王の発言そのものを検討してみよう。「信仰、理性、大学――回想と省察」と題された説教は、かつて教鞭をとっていた大学ということもあってか、率直な問いかけや、学術的な課題設定と論理展開が特徴的である。テーマはキリスト教神学の最大・永遠の課題と言っていい「理性と啓示の適切な関係」である。
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