中東―危機の震源を読む (35)

情報リークが謎を深めたイスラエルのシリア攻撃

 九月六日の謎めいた事件が今もなお尾を引いている。この日の朝、イスラエル空軍機がシリアの領空を侵犯、なんらかの攻撃を行なって去っていった。明らかな事実はこれだけである。ここに憶測が加わり、諜報情報のリークが断続的になされ、ホワイトハウス内の政治闘争の重要課題にもなりかけている。 イスラエルによるシリアへの攻撃というのは、それだけで大問題に発展しかねない事件である。イスラエルとシリアは、イスラエルが一九六七年以来占領しているゴラン高原をめぐって争っており、戦争状態は終結していない。最近もゴラン高原を挟んで相互に部隊の動きや兵力増強をめぐって緊張の高まりがあった。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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