午前八時、出発客で混雑が始まった中部国際空港。人ごみを避けるように、十人ほどのアジア系の若者が航空会社カウンター脇に集められている。帰国の途に就こうとしているベトナム人研修生たちである。 彼らは三年前に外国人研修・技能実習制度(以下、研修制度)で来日し、愛知県内にあるトヨタ自動車系の下請け業者で働いていた。研修生として入国する外国人の数は年に約十万人。これまでみてきたように、その実態は政府が表向きは受け入れを認めていない「単純労働者」で、最長三年間は日本に滞在できる。賃金は他の外国人労働者よりも格段に安く、人手不足と納入先からのコスト削減要求に悩む中小企業にとっては今や欠かせない存在だ。

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