厚生労働省から「体細胞クローン技術で生産した牛と豚を原料とする食品の安全性」を評価するよう求められた食品安全委員会は「虚しい作業」にとりかかる。安全かどうか以前に、クローン家畜を普通の家畜と区別する科学的な技術はないからだ。 一世代前の技術である「受精卵クローン」は野放し状態。農林水産省が確認しているだけで、一九九三年以降、日本では三百頭以上のクローン牛が食肉として処理され市場に流通した。北米では受精卵クローンの家畜に関して流通上の規制はなく、もちろん表示義務もない。輸入牛肉の中にクローン牛が混じっていたかどうか、だれもわからない。一方、日本では受精卵クローン牛を「Cビーフ」と表示することが「推奨」されたが、まったく普及しなかった。任意表示なのに、わざわざ消費者が敬遠するようなシールを貼る業者はいない。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン