「シンガポール合意」から覗く北朝鮮の狙い

執筆者:平井久志 2008年5月号
エリア: アジア

食糧危機が伝えられる北朝鮮だが、なぜか落ち着き払い、二〇一二年の“節目”を待つ。その皮算用は――。 どうやら「シンガポール合意」が成立したようだ。 四月八日にシンガポールで行なわれた協議で、米国のヒル国務次官補と北朝鮮の金桂冠外務次官は、濃縮ウラン製造とシリアへの核技術協力という北朝鮮をめぐる問題点をどう処理するかについて大筋で合意したもようだ。 この原稿を書いている時点では詳細はわからないが、プルトニウムを使った核開発については六カ国協議の議長国である中国に正式に申告し、焦点の濃縮ウランやシリアへの核技術協力については米朝が秘密文書や非公開の覚書の形にまとめることにしたのではないかとみられている。特に微妙な部分については、米国の主張に対して北が「ある種の認識」を示すという間接是認の方式で処理する可能性が指摘されている。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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