ブックハンティング・クラシックス
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盧溝橋事件前夜の大陸に渡り日中関係の核心を取材した男の回想
『上海時代(上・中・下)』松本重治著中公新書 1974年刊(現在は古書としてのみ入手可能)『上海時代』との出合いは三十数年前。大学院入試を二日ほど後に控えたある日、息抜きに覗いた古本屋だった。盧溝橋事件に向けて緊張の度を加える日中外交関係を縦糸に、上海を主な舞台に展開される虚々実々の和平交渉を横糸に、その渦中に身を投じたジャーナリストが自らの体験を綴った回想録に引きずり込まれたのはいうまでもない。だが、肝心の受験準備は最後の詰めを欠き不安なままに試験会場へ。ところが論述問題が「盧溝橋事件前後の日中関係について述べよ」。我が強運と僥倖に快哉である。
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